医療支援報告④

日本医科大学付属病院が誇る多目的医療支援車

東北関東大震災当日の日本 DMAT としてのミッションと気仙沼市医療支援チームの第 1 陣、 2 陣で大活躍した多目的医療支援車の装備と内部を紹介する。多目的医療支援車は災害およ びテロ(核物質、生物兵器、化学兵器)における医療支援活動の際、最前線で医療指揮所として機能させることを目的とした車両で、除染設備、防護設備、通信設備、宿泊設備などを有する。

車両側面に収納式ルーフが内蔵されており雨天でも屋外指揮活動が可能な構造となっている。内部にはコピー機、テレビ、通信設備を有した司令室の設置が可能である。自炊・宿泊装備もあり、被災地で中・長期の医療支援にも対応可能である。今回の震災・津波災害医療支援では、車載テレビで情報収集、 車載電話にて情報伝達を行いながら移動、到着後は 指揮所兼宿泊設備として活躍したが、これらの機能は現地の資器材を使用せずに完全独立で可能である 。

 

除染設備は組み立て式で、歩行可能な患者の除染設備、歩行 不可能な患者の除染設備が備わっている。シャワー用の水は除 染車両に搭載されている200Lのタンクおよび水道から補給されるが、加温可能であるため温水での除染が可能である。 作業者の背中に装着されている黒い機器にフィルターを 装着し送気することで防護服内が陽圧となり、各種毒劇物に汚染された環境下でもクリー ンな空気下での作業が可能である。


気仙沼市医療支援活動

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に対し東京都、東京都医師会、日本医師会、全日本病院協会は宮城県気仙沼市で医療支援活動を開始し、日本医科大学チームは18日から同市の医療支援活動を開始し、3泊4日のローテンションにて診療活動を行っている。また、日本医科大学チームは救急医学教室の医師を中心に付属病院、多摩永山病院、武蔵小杉病院の様々な医療スタッフが分担して活動を行っている。3月31日現在、第5陣が活躍中であるが、第3陣までの診療状況について記載する。

 

1)気仙沼市の近況
 水道・ガス・電気・携帯電話回線などのライフラインは徐々に回復してきており、半島部である唐桑地区においても電気以外のライフラインは部分的に稼働し始めている。ガソリンの流通は徐々に回復してきているが、入手は依然として困難な状況でありスタンド前の車列にて早朝から渋滞が起きている。緊急車両は時間帯を決めて優先的に給油可能である。

 

2)日本医科大学の活動
日本医科大学の気仙沼市医療支援チームは第1陣が横田教授、布施講師、辻井病院講師、恩田助教の4名の医師と2名の救命士、第2陣が宮内講師、畝本講師、藤木研修医の3名の医師と1名の救命士、今回はそれに続く第3陣となり白石助教、塩村研修医の2名のチームが担当し、第4陣が金助教、竹の下医師、加藤薬剤師、田邉君(医学部5年)、第5陣が小野寺医師、石川医師、金子医師、木野看護師が担当している。診療拠点は唐桑地区南部の中井公民館および周辺の避難所(崎浜集会所、土筆の里、はやま館、中井小学校)および周辺住民である。避難所巡回診療に関しては医療支援本部にて他医療機関のチームと協議を行って、担当地区を調整している。


また、多摩永山病院チームも二宮教授、久野講師、苛原助教、鈴木大学院生をはじめ、看護部の協力のもとに上記千駄木チームを共同で医療支援を行っている。


活動地域内の有床診療所である小野医院(菊池医師)も診療を開始し、慢性期疾患に対する診療、処方が可能とのことで定点救護所の受診者は減少傾向にあったため、第3陣は午前中に中井公民館での定点診療、午後巡回診療という診療形態をとった。

 

なお、数名の精神科医が気仙沼市医療支援チームに参加していたが、移動手段のない個別参加医師が多いため、25日朝の本部でのミーティングで移動手段に余裕のあるチームに挙手制で配属されることとなった。日本医科大学チームにも、都立小児医療センター所属の澤谷医師(4月より日本医科大学付属病院精神神経科)が配属され、災害医療支援において精神科医師とのコラボレーションを行った。

 

① 巡回診療
日本医科大学チームの巡回診療では一日約15人前後の避難者の診療を行った。内容は周辺避難所内では慢性疾患(高血圧、糖尿病、脂質代謝異常症、循環器疾患など)の診察や感染症対策指導など第2陣とほぼ同様であったが、外傷が減少した一方で、施設内での発熱患者、在宅高齢者の褥瘡観察・処置・指導が急増する傾向にあった。また高齢避難者に不穏、不眠、昼夜逆転など共同避難生活の支障となる症状が出現し始めていた。

 

  • 施設内でのインフルエンザの流行は非常に問題となるため、38度以上の発熱患者に対しては鼻咽頭ぬぐい液による
    インフルエンザ検査を施行し、陰性であっても疑わしい症例に対しては個人のスペースを設けるなどのアドバイスをした。

     
  • 在宅の訪問に関しては、三陸地方の半島地区の地理的な特性から急峻で狭い坂道が多く自宅前まで普通自動車で近寄れないことがあり、徒歩で自宅を探しながらの診療となる。よって一人当たりに要する時間が長くなる傾向にあった。このような在宅患者の情報は午前9時から唐桑総合支所内で行われる地域保健師とのミーティングで得られる。特に、24日〜27日に北海道からの保健師の応援チームが同地域で各家庭を一軒一軒訪問するローラー作戦を展開しており、一日に3〜4人の往診依頼を受けた。診察した内容は午後5時から気仙沼市健康促進センターすこやかで行われるミーティングに持ち帰り、衛生・医療品を救護所、各家庭へ搬入する任務も行った。特に介助能力に問題があり、濃厚な介入が必要な場合には、発足したばかりの在宅医療支援チームへの引き継ぎを行った。

     
  • 不眠、不穏などの症状が強い患者に対しては同行した精神科澤谷医師の処方により対処した。また組織されつつある精神科チームに引き継ぎを行い、週2回程度の巡回を行ってもらうこととした。

② 中井公民館内医療救護所での診療
25日から27日まで中井公民館に常設された医療救護所で、避難者および周辺住民の診療を行った。医師1名、研修医1名の二人のチームであったが、受診者数は減少傾向にあり特に混雑、混乱当はなかった。上気道症状、発熱、処方薬切れ、血圧測定目的がほとんどであるが、不眠、頭痛、倦怠感、余震の度に不安を覚えるなどの急性ストレス反応に伴う症状も散見され、精神科澤谷医師への診療を依頼した。

 

③ 診療実績
第1陣から第3陣までの診療実績を下図に示す。それぞれ特徴は異なるが、循環器、呼吸器、消化器疾患が多い傾向を認めている。
   


同期間での多摩永山病院チームの診療実績は以上である。
  

          
 

pagetop