医療管理学

医療管理学とは


日本における「医療管理学」は当教室が創始で、その後全国に広がった。しかし今日の医療環境では、管理(administration)よりむしろ経営(management)が求められており、医療管理が発展し「医療マネジメント」の概念が今全国に拡がりつつある。

本教室の英語名も、Department of Health Policy and Managementとしており、経営と政策を含む名称である。実は、現状の経営がmanagementで、長期未来の経営がpolicyであり、この2つはコインの裏表をなしている。さらに、医療マネジメントも様々なレベル、すなわち国際、国内、地域、病院、病棟、臨床からなっており、それぞれのレベルでの政策・経営の研究を進めている。
そして、「研究」のみならず、その応用として「教育」や「提言」、すなわち臨床医学教室での臨床実践に相当するアドバイスやコンサルテーションも推進してきている。
以下3領域における活動を紹介する。

1. 教育
1) 国際
アフリカ15カ国を対象に5S/KAIZEN/TQMの手法、ベトナム国行政官への医療安全、途上国行政官のヤングリーダーへの医療政策研修
2) 国内
全社連病院部長対象次期リーダー「経営戦略研修」、各種団体での「医療安全研修」
3) 学内
医学教育1年から6年までの一貫したステップ・バイ・ステップの「臨床マネジメント教育」(医学判断学、EBM、情報マネジメント)、「医療コミュニケーション」、「医療福祉地域ツアー」、「パンデミックチーム医療」ドリルなど参加型学習
2. 提言
1) 国際
政策については、アジア6カ国の医療政策研究者による「ドラゴンネット」を主宰し、スリランカやベトナムへの「医療政策のアドバイス」、また「コンゴ民主共和国政府厚生省改革」へのアドバイス。
2) 国内
政策については、厚労省を中心に「医療情報提供」に関する委員会委員長、「病院の質の管理指標」に関する委員会委員長など、経営については、「栃木県、横浜市、飯能市の病院経営」に関するアドバイス。
3) 学内
千駄木病院の「経営戦略」、「総合診療科」へのアドバイス。
3. 研究
1) 経営
「医療崩壊」の原因分析と解決手法の研究、「医療安全、質、満足」向上の研究、これらを「新経営(New Management)」として統合。
2) 政策
医療システムの「資源分析」(人材、特に医師需給、病院、特に機能と所有)、喘息、高血圧、ガンなどの「疾病マネジメント」、超高齢社会の医療のあり方として「ケアサイクル」の提案と分析。
3) 医科学
① 歴史概念
永年の「健康転換(Health Transition)」の研究を発展させ、人類の生存戦略、即ち生殖戦略と生産戦略の展開である「生存転換(Survival Transition()論として新たに総括、高齢社会の社会や医療の分析に応用した。この概念は従来の人口転換、疾病転換、経済発展論を統合する有用な概念で、近代を終えた人類の行方を探るに有用なツールである。
当初基礎科学、基礎医学、臨床医学を統合して教えるための新たな「人間学」の方法として開発した「進化生態医学(Eco-Evolutionary Medicine)」は、細胞病理学を乗り越え高齢社会に適した新たな「生態病理学(Ecological Pathology)」として発展させるに有用な新医学体系であることが判明し、日本医大発のプロジェクトとして推進している。

② 新たな医療
19世紀、平均寿命40歳台、単一疾患単一エピソードの時代にウィルヒョウやビスマルクらによって確立された近代医学は、21世紀、平均寿命80歳台、複数疾患継続エピソードの時代となり、全く新たな医療が求められている。当教室ではそれを「ケアサイクル」論としてまとめ、さらにケアサイクログラムや、意思決定の広場ディシジョンフォーラムなどのツールを開発しつつある。これは患者や家族の生き方や家族の生き方や死に方を長期的に展望し、最適なケアを選択し実施するツールとして有用と考えられる。

③ 新たな公衆衛生
「公衆衛生学」もまた、19世紀の寿命50歳以下の感染症を集団でリスクマネージメントする手法として生まれた歴史をひきずり、慢性疾患では永年複数の原因が存在するにもかかわらず、2×2表を用いて1つの特定病因を追求し、死の予防に重点を置いてきた。今日、予防や医療が主として対象とする退行性病変は、病気というより早められた老化であり生涯を通したリスクとその相互作用の把握が必須である。21世紀の公衆衛生は個人の生涯を時間軸で捉え早世を防ぎ最後は豊かな死/生を迎えることを支援する学問大系に転換する必要がある。いわば「生涯支援公衆衛生学」(Life Supporting Public Health)として種々の手法を開発しつつある。

4. 統括

1) 多摩プロジェクト
現在、未来型の3大プロジェクトを進めている。厚生労働省の助成を受けた、永山病院のある「多摩」で、高齢化速度日本一の多摩地区にケアサイクルを構築して、住民がいきいきと生きて豊かに死ねるまちづくりを目指している。

平成24年度 老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業
「地域包括ケア支援・推進・評価するための情報・ケアネットワーク構築に資する調査研究事業」
平成24年度報告書 pdf

平成24年度報告書 資料編 pdf
 

2) JAXAプロジェクト
宇宙技術を日本の高齢社会の医療に応用しようとする試みである。
3) 文科プロジェクト
文科省科学技術政策研究所の発注で「超高齢社会の健康とは何か」を定義し、「21世紀の日本の生命科学及び医学の研究戦略」を考えるというたいへん重要なプロジェクトである。

これらの研究や提言を「フォーラムメタメディカ」討論の広場で、外部の方々とも交流し共有してまいりたい。

 

参考リンク

医療現場における多職種連携教育サイト
http://ipe-nms.com
 

pagetop