学長のご挨拶

 

 


「競争力」のある大学づくり

現在、全国的に医師不足への対応が急務となっています。さらに2003年度からスタートした「新臨床研修医制度」により、医療の現場では若手医師の「争奪戦」が激化しております。諸先輩方が130年余の長きにわたり築き上げてきた日本医科大学においても、「競争力」のある大学づくりを行っていかなくてはならないと考えています。常に10年後を見据えた「良き医療人」の育成のために次の5項目を掲げ必要な改革を推し進めていきます。

1…「真の実力」を身に付けた医師の輩出

2…「初期臨床研修」と「継続教育」のさらなる充実

3…教員の「教育・研究・診療」意欲を高め活性化に繋がる「教員評価」

4…大学院教育の充実

5…法人・病院と緊密に連携する風通しの良い組織づくり

 

 

病める人のために最善の治療を行う、そこには何の打算も計算も存在してはならない。

時代に即した医師としての人間教育を重視するとともに卒前教育を充実させるために基礎医学と臨床医学の一体化を推進します。また卒業後においても、医学習得に関する学習意欲は臨床体験を通じて喚起されるという前提にたち、初期臨床研修期間に力を注いで参ります。6年間の学部課程と卒業後2年間の研修を一貫した医学教育と捉え、研修終了後には、第一線で活躍できるための心構えと向上心をもった医師を輩出したいと考えております。

そして周知の通り、現代の医療は、医師だけでなく、看護師や薬剤師、検査技師、事務職員など多くのスタッフによる「チーム医療」が前提となっています。医師はそのなかで、リーダーシップをとる存在として機能し、さらに相手の立場になり最高の医療を患者さんに提供することが出来なくてはなりません。特に医師に求められるのは「我が身を捨てて、広く人々のために尽くす」ということです。これは本学の学是である「克己殉公」という考え方にも通じています。病める人のために最善の治療を行う。そこには何の打算も計算も存在してはならないのです。

 

 

「良き医療人を育成する日本医科大学」という伝統は、確実に次世代へと受け継がれていく。

また、本学では「愛と研究心を有する質の高い医師と医学者の育成」を教育理念に掲げてきました。私が信条としているのは「人を思いやる心」です。患者さんの家族がどんな医療を求めるか。その場その場で考えて答えを導き出さなくてはなりません。医療現場においては、病気だけでなく患者さんの心も診ることが医師には求められているのです。病のみならず、心までも支えることができるのが「真の医療人」ではないでしょうか。本学を受験するみなさんにも、自分はなぜ医師を目指すのかということを繰り返し考えていただきたいと思います。そして医学の道を歩みはじめたならば、いつも「なぜ?」という好奇心と探求心をつねに持っていてほしいと思います。

そのために、日本医科大学だからこそできる「継続教育」に関するプログラムを作成します。対象者は在学する「学生」だけではありません。このプログラムを通して、「研修医・専修医」や現役の「教職員」、さらには地域医療に貢献する「同窓の先生方」が教育面でも関わっていくことが可能となります。卒後教育の充実化、さらにはこの「継続教育」の充実によって「良き医療人を育成する日本医科大学」という伝統は、確実に次世代へと受け継がれていくと確信しています。

そして、優れた研究心をもった医師を育成し、世界トップレベルの研究成果を生み出す環境を構築することも、日本医科大学のもうひとつの責務であると考えています。そのために大学院教育の充実は不可欠です。おかげさまで平成19年には大学院棟を新設することができました。平成22年には大学院設置50周年を迎えました。医療の世界も、時代の流れは確実に相互交流の場を求めています。海外を含めた他大学、他の研究機関との交流が促進され、新たに早稲田大学、東京理科大学、中央大学、さらに南カルフォルニア大学との大学間交流に関する協定が締結されました。これまで交流のあったハワイ大学、ジョージワシントン大学、チェンマイ大学への交換留学はさらに拡充しました。本学は国際化に対応できる「真の医療人」を育成する環境を着実に整えています。

 

 

医療の第一線で現場に立つのは医師であり、その医師を育てるのが医学教育であり、日本医科大学はその大切な責任の一端を担っています。

学長として以上のようなことを踏まえ、しっかりと覚悟と決意をもって臨む所存でおります。しかし私一人では何一つとして実現させることは不可能です。大学に関わる関係者全員のアイデアに耳を傾け、全教職員が一丸となれるよう、法人と大学、そして病院の三者が連帯できるような風通しの良い組織づくりを目指しています。日々のニュースでは、慢性的な医師不足、専門分野の極端な偏り、救急診療拒否、高齢者医療など深刻な医療問題が報じられています。こうした医療に関する問題は、すぐには解決できない複合的な問題です。しかし医療の第一線で現場に立つのは医師であり、その医師を育てるのが医学教育であり、日本医科大学はその大切な責任の一端を担っています。

医療の危機が叫ばれている今こそ、この130年余の長きにわたって先輩諸氏が築いてこられた本学の、真の価値が問われているのではないでしょうか。このような変革期に伝統ある日本医科大学の学長の任を引き受けることは、並々ならぬ覚悟が必要でした。それは日本医科大学のみならず、ひいては日本の医療の将来がかかっているからです。学長としての責任の大きさと重さを日々痛感しています。今後とも引き続き、みなさまからの貴重なご意見と暖かい支援を賜りたく、ここに改めて心からお願いする次第です。